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輸液投与の実際とリスク研究会を開催して(会誌用)

平成24年7月28日(土)開催

第1回「輸液投与の実際とリスク」研修会

平成24年度診療報酬改訂において、病棟薬剤業務実施加算が新設された。
今までの薬剤管理指導業務(服薬指導)から1歩を踏み出し、薬剤師が勤務医等の負担軽減及び薬物療法の有効性、安全性の向上に資する薬剤関連業務を実施している場合に加算されることとなった。業務の具体例が示されている中に、「薬剤の投与にあたり、流量又は投与量の計算等の実施」といった項目がある。
とはいえ、点滴セットや輸液ポンプについては、病棟へ出向けば毎日のように目にしているが、薬剤師は注射を行うことがないため、多くの薬剤師は点滴セットや輸液ポンプを操作する機会がなかった、或いは触れようとしてこなかったのではないだろうか。しかし、有効で安全に投与するためには、薬剤投与時の流量計算等を行い、実際に輸液がどのように投与されているのか、器材や機器がどのような仕組みであって、どう使用されているのかを知る必要がある。
輸液に関連する機器や機材に触れ、構造を知ることで、「薬剤の投与にあたり、流量又は投与量の計算等の実施」も可能となるし、投与に潜むリスクの回避を行うことができれば患者により安全な医療の提供を行うことができ、チーム医療の推進に寄与できる。
このような背景から、関信地区国立病院薬剤師会 前会長前田先生の提案もあり、薬剤師会で点滴セットや輸液ポンプ等の研修会を開催することとなった。
研修会参加者を募集したところ、120名以上の応募があったが、会場の広さや機材の数等の問題から、応募していただいた先生方には大変申し訳ありませんでしたが、50人程度に絞らせていただいた。
研修会は、講義と実技を組み合わせて進める形式で行い、最後に「輸液剤 投与の実際」として、演習問題を3題用意した。
実技については、輸液ポンプ等の機器の台数の関係から、受講者を10組(1組4名から5名)に分けで行った。
研修項目は以下の通り

  1. ①輸液システム/薬剤投与の注意
  2. ②輸液、シリンジポンプの操作とトラブルシューティング
  3. ③輸液剤 投与の実際
輸液ポンプの説明
ルートについての説明を聴く
それぞれの研修項目の概要は以下の通り
① 輸液システム/薬剤投与の注意では、まず輸液投与に必要な器材について、輸液セットの種類、材質による違い、用途、形状の違い等について説明があり、実際に各自に配布された輸液セット等を手に取り、形状やチューブの弾力の違いなどを確認した。
薬剤投与時の注意としては、投与時に観察しなければならない項目、血管痛の原因、対処方法、血管痛を起こしやすい薬剤について説明があった。また、血管外漏出については、組織障害を起こしやすい薬剤、処置方法等まで説明があった。血管外漏出については、日常の業務の中でも、問い合わせを受けた方もいると思われるが、ポイントがまとめられていたので、復習と今後のDI業務にも役立つ内容であったのではないかと思う。
次に、注射筒の合わせ方や投与速度の算出、点滴速度に影響与える因子と輸液セットを設置するときの注意点が解説され、実際の輸液セットに触れ、各部分の操作を確認した。
また、ルートの素材の違いによる薬剤の吸着、収着、溶出の違い、これらを起こす薬剤等について詳しい説明があった。
説明の後、実際に輸液セットをつなぎ、投与速度の調整などを行った。
実技開始
指導者が全部ループに1人ずつついて細かく説明
②輸液、シリンジポンプの操作とトラブルシューティング
このセクションでは、ポンプに関連した事故の事例紹介、ポンプの仕組み、操作方法、セット時の留意点等の説明があった。その後、各グループに1名ずつ指導者がつき実演が行われた。受講者全員が1度は輸液ポンプとシリンジポンプにふれ、実際にセットを行った。
また、ポンプを使用したときに多くみられるトラブルの再現が行われ、次いで受講者の実技が行われた。
操作後、輸液ポンプに係わる事故の説明
次はシリンジポンプ
③輸液剤 投与の実際では、①②で学んできたことを確認するための課題が3題用意され、グループ毎に取り組み、発表が行われた。
1題目は、アミグランド500mL投与中に側管からラシックス40mgをボーラス投与するというもので、薬剤の性状についての知識と、投与に際してはどのような対策を講じる必要があるのかが求められた。
2題目は、ニトログリセリンを12.5μg/分で側管から投与するというもので、時間あたり何mlになるのか、ルートの材質の選択、微量を正確に投与するためには何が必要か、デットボリュームへの対策など機器選択など複数の要因を考慮することと、正確な機器の取扱いなどが求められた。
3題目は、脂肪乳剤500mLを4時間かけて側管から投与するというもので、側管をつなぐ位置(フィルターとの関係)、ルートの素材、ポンプの使用の有無等が問われた。
課題への取り組み(速度の調製)
課題の説明
本研修会は、輸液そのものではなく、投与に必要な器材・機器についての研修と新鮮さがあったことや、座学が主であった今までの研修会とは違い、実技を主体にしていたことなどから、今までにはない熱の入った研修となっていたように感じられた。また、実技や課題をグループ単位で行うことで、他施設の人と接する良い機会となったのではないかと思わる。
受講後のアンケートでは、全項目について約90%の受講者が5段階評価の4以上を付けていた。特に、「新しい知識を得ることが出来ましたか」との問には、98%の受講者が得られたと回答しており、さらに、「病棟薬剤師業務を行っていく上で有用」との趣旨の記述が多かった。最初に記したように、点滴セットや輸液・シリンジポンプは普段から目にしてはいるが、「以外と知らないもの」であったことが今回の研修で解消されたことは病棟薬剤師業務を行ううえで1歩前進したのではないかと思われる。
今回の研修会については受講者からも高い評価を得たこと、応募したが受講できなかった方も多かったことなどから、本年度中に第2回目の開催を計画しているところである。
もう一方で、研修会開催にあたっての検討課題もある。アンケートの回答にもあったが、1つ目は会場の広さと、机の大きさである。当初の予想以上に充実した輸液セットが個々に配布されたことで、全員が輸液セットを広げるには十分な広さが無く、もっと大きな机が必要であったこと。部屋の広さも点滴スタンド等を配置し、グループで囲むと身動きするスペースがほとんど無かった。とはいえ、交通の便が良い広い会場を確保することは容易なことではない。
2つ目としては、経費が必要であること。ある程度継続するためには、予算をどのように確保していくのかを検討する必要がある。
これらのことについては、薬剤業務委員会を中心に薬剤師会で検討することになると思われる。
これは私見ではあるが、輸液研修会は当面は必要であると感じてはいるが、本当に継続的に行う必要があるのか、或いは、継続するとした場合、例えば対象を新人薬剤師対象の研修会にしていく等を含めて検討していく必要があると思う。そして、輸液研修会からフィジカルアセスメント研修へシフトしていく必要があるのではないかと思っている。
最後に、休日にもかかわらず、研修スタッフとして参加していただいた先生方と、ご協力いただいたテルモ株式会社の方々に御礼申し上げます。

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