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「輸液投与の実際とリスク」研修会に出席して(1)

国立病院機構甲府病院 薬剤科
長田 賀世子 

平成25年1月26日土曜日、輸液投与の実際とリスク研修会に出席させていただきました。
点滴セットも輸液ポンプもシリンジポンプも、病棟ではかなりの頻度で目にしています。しかし、私がそれらを目にする時はチューブの先には必ず患者さんがいる状態のため、あまり凝視するのもはばかられていました。ましてや患者さんの前で「これ、どうなってるんですか?」と看護師に聞くわけにもいかず、構造その他はほとんどわかっていませんでした。正直に告白しますと、それは看護師さんの領域だからと自分で勝手に決め付けて、わかろうとしなかったから、今まで知らないままにしてしまったわけです。本来ならば、私は薬の専門家であるはずですから、点滴に使用するいろいろな周辺機械について、実際に操作することはなくとも、せめて知識だけでも持っておかなくてはなりませんでした。今回、この研修会を受講できて自分は本当に運が良かったと思っています。ポンプ等の仕組みや操作を実際の機械に触れながら教えていただける機会は、そんなに多くはないでしょうから。また、この研修会に出席したことで、しっかり物事を理解するには、実際に操作してみるかあるいはきちんとシミュレーションしてみることが大切であると再認識することができました。私にとっては、これも大きな成果だったと思います。

まずは、講義で輸液セットの種類、材質、形状などについて教わりました。点滴ポンプを使うときは、ポンプに対応したチューブを使わないといけないそうで、なんでもいいというわけではないそうです。ポンプの構造を知ってみれば、なるほど・・と納得がいきました。

次に、薬剤投与時の注意について講義がありました。血管外漏出で起きた傷害事例の写真は重篤な例とはいえ、心に強く残りました。
「漏出が分かったら点滴をすぐに中止する。針を抜いてしまわずに、周りの薬液と血液を吸引除去する。」という対応は知識としては知っていても、あわてて針を抜いてしまったりしそうで、普段から心に留めておかないと、いざという時に咄嗟にできないかもしれないと感じました。薬剤師も病棟に滞在する時間がますます増えてくれば、事故が起こった場面に遭遇する可能性も高くなるでしょう。その場で冷静に的確なコメントができるようになっていたいと思います。その他にも、輸液器材への薬剤の吸着・収着についての講義は両者の違いがよくわかり、良い復習になりました。

次に、輸液ポンプ・シリンジポンプについて講義を聴きながら、実際にその操作を行いました。また、そのインシデントとその対応についても、対応を誤るとどうなってしまうのか、実際に班ごとにみせていただきながら学習しました。各班にテルモの担当の方がついてくださり、機器の使用方法やインシデントの実際などについて詳しく説明してくださいました。私の幼稚な質問にも丁寧にご回答いただき、本当にありがたかったです。
閉塞時の対応を誤ると、ボーラス注入になってしまうことはしっかり覚えておこうと思います。また、シリンジポンプのインシデントであるサイフォニング現象は、本当に恐ろしいインシデントだと思いました。微量ずつ厳密な投与が必要だからシリンジポンプを使っているのに、サイフォニング現象を起こさせると、あっという間に50mLシリンジ内の薬液が注入されて空になっていくのを実際に見て、ぞっとしました。シリンジポンプが点滴台の下のほうについているのは、安定を良くするためだろうくらいに思っており、こんな重大なリスク回避のためだとは思っていませんでした。知らなかったことを、恥ずかしく思いました。

次は、与えられた課題を輸液セットを用いて実際に各班でやってみることになりました。
座学で一通り教えていただいた後ですから、さっくりこなせる筈です。ヒントになるはずの資料もいただきました。答えも頭ではほぼ分かっています。ところが、いざ課題を実地に行おうとすると、次から次へと疑問が噴出してきました。
例えば、課題1「アミグランド点滴中にフロセミドを側管からボーラス投与しろ」を実際に行おうとした時は次のようになってしまいました。
ラシックスは配合変化が起きやすい薬剤であることは分かっています。アミグランドは今回pH5.5という設定なので、フロセミド投与の前後に、生食でルートをフラッシュし、アミグランドとフロセミドが直接接触しないようにする・・というのが答えであることは、すぐわかりました。ところが、いざやろうとすると、細かいところでわからないことだらけです。「このルート、生食5mLのフラッシュで大丈夫なのか、それとも10mLくらいいるのか。ラシックス使うような人なら液量は少ないほうがいいんだけど。でもさっきの講義で少ないとどうとかいってたよなあ。ところで、10mLでフラッシュとしてもそれに10mLのシリンジ使うのはどうかなあ。ありゃ、ラシックスはフィルターの上流からでいいんだっけ?下流かな? なるほど、ガラスアンプルだから上流のほうがいいとはさすがのご意見ですね。えっ、資料のフィルター通すなリストに載ってる? あぶなかった!じゃ、下流から。でも、ラシックスをフィルター通しちゃいけないなんて聞いたことないけど・・。うーん、この資料の書き方だと、フラッシュすれば通してもいいってことかも・・。だれか、日本語が得意な人いませんか?!」といった具合で、班での作業も大騒ぎです。
課題1でこれだけ大騒ぎしたのですから、課題2と3も同様に、答えはわかっても細かい疑問が噴出したことは言うまでもありません。課題2は「ニトログリセリン(25mg/50mL)を8.4μg/分のスピードで側管から投与する」、課題3は「脂肪乳剤500mLを4時間かけて側管から投与する」でしたが、やはり、本当に操作してみることは大切なことだとしみじみ実感しました。

半日の研修会でありましたが、本当に中身の濃い半日でした。あっという間に時間が過ぎた気がしますが、正直、終わった時にはかなり疲れました。今回の研修会に参加させていただけたことで有意義な講習を受けることができ、本当に良かったと思います。
最後になりましたが、講師の皆様、各班で操作の説明をしてくださった方々、また会場の準備等行ってくださった皆様、本当にありがとうございました。

実習風景
 
配付された資材達

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