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NONMEM7初心者コースに参加して(1)

神奈川病院 薬剤科
髙山 幸恵

はじめに
平成24年11月10日(土)9:00から18:00まで、薬剤業務委員会主催(関信地区薬剤師会後援)によるNONMEM7初心者コースが、国立病院機構東京医療センターで開催されました。本研修会は2009年より開催され、今回で第4回目です。各自パソコンを持参し、ワークショップ形式で行われました。 講師は、国立がん研究センター中央病院の本永正矩先生、牧野好倫先生、 国立病院機構東京医療センターの安藤菜甫子先生、西村富啓先生、コーディネーターは 国立病院機構神奈川病院:河野晴一先生でした。講習会の概要等を報告します。

NONMEMとは
NONMEMはカリフォルニア大学サンフランシスコ校のthe NONMEM Projectが開発した解析ソフトで、非線形混合効果モデル(Nonlinear Mixed Effect Model)のパラメータを統計学的な回帰型の解析により推定するものです。今日普及してきた母集団薬物動態解析に特に向いており、むしろ、このソフト と種々の解析技法の発達により、母集団薬物動態解析や母集団PK-PD解析が普及してきました。
これは、データへの薬物動態学的および/または薬力学(PK / PD)モデルをフィットする際に被験者内と被験者間のばらつきが考慮されている薬剤の問題を解決します(図1参照)。

多くの被験者から得られた血中濃度データを用いて、母集団における平均的な薬物動態パラメータ、それらの被験者間での薬物動態パラメータの個体間変動(個人差)の大きさ 、個体内変動の大きさ の算出によって個人差の要因を探索することができます。
現在までにTherapeutic range(治療域)の狭い薬剤であるバルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトイン、ゾニサミド、ジゴキシン、テオフィリンなどの、日本人における母集団薬物動態パラメータが整備され、設定された有効域に患者の血中濃度を維持するように個別投与設計を行うことが容易になりました。
NONMEMソフトウェアは1980年代より北米西海岸、カリフォルニア大学のDr. Lewis SheineとDr. Stuart Beal らのNONMEMプロジェクトグループによって開発され、多くの製薬会社とPK / PDモデリング研究者達によって母集団薬物動態解析のために30年以上にわたって使われてきました。2006年のバージョン6.1からは、アイルランド、ダブリンのICON社の開発ソリューションにおいて、継続的な開発ならびメンテナンスを行っています。

NONMEMはFORTRAN言語で書かれており、FORTRAN90/95に対応したソースコードなので、G-フォートランのようなコンパイラが使用できるWindows環境下で駆動することができます。

研修会の到達目標

1.NONMEMインストール
ZIPファイルを解凍し手順に従い、Cドライブ上に格納し、LicenceフォルダにNONMEM.licを格納、再起動することでNONMEMを起動できる環境にできます。

2.NONMEMの起動・実行 (データ構造の理解)
Window上のアクセサリーに格納されているDOSV画面上から以下のコマンドを入力して起動・実行を確認します。
C\>NONMEM\run\nmfe72 control3 report3.txt
というコマンド入力により、control3(コントールファイル)が実施され、report3.txt が掃きだされます。deta結果から0MINIMIZATION SUCCESSFUL(解析成功)というシグナルが検出されます。さらにオブジェクトファンクション値が8.940であることを確認することによりNONMEMが正常に起動・実行されていることを確認します。

3.PKモデリング
コントロールファイルで指定する内容として、構造モデルの種類、誤差の種類、パラメータの初期値、解析アルゴリズムの種類があります。構造モデル(PKモデル)の種類とは、コンパートメント数、消失の線形性(非線形)、吸収過程(0次/1次/ランダムなど)を指定します。これは、
コントロールファイル内の$SUBROUTINESのオプョン薬物動態ライブラリーに記載します。ここでADVANに薬物動態モデルを指定し、TRANSはパラメータの組み合わせの指定をします。

4.共変量の探索
共変量とは、薬物動態パラメータに影響を与える変動要因のことであり、 例えば、肝機能検査値、血漿アルブミン値、年齢、体重、性別などです。共変量を見出すことで 原因不明の個体間変動を小さくすることができます。 薬剤の特徴、共変量候補データの把握ができると、既存の薬剤について 、既存のPPKモデル式の改変 、未知の共変量の探索 、PKPDモデル式への応用などが可能となります。

最後に
NONMEMは、Window上のアクセサリーに格納されているDOSV画面上からコマンドを入力して実行したり、共分散探索では簡単なプログラムをメモパッドに書き込んだりする作業にGUIを日常的に使用している私たちには違和感があります。しかし、実際に操作してみることはなによりもNONMEMの使い方に慣れることと実感しました。NONMEM7初心者コースは大変、有意義だと考えます。今回が初めての参加でありましたが、複数回参加することでより理解を深め、今後の薬剤師業務にいかせる場面を作っていきたいと思います。

引用文献

  1. U.S.Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration. Guidance  for Industry. Population Pharmacokinetics.1999.
  2. ICON Development Solution(http://www.globomaxnm.coc/nonmem.html)
  3. NONMEM User  Archive:by thread(http://www.cognigencorp.com/nonmem/current/thread.html)
  4. FTP Directory: ftp://ftp.globomaxnm.com/Public/nonmem)

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